冬季練習は短距離走において重要なスパンとなります。厳しい練習を繰り返すことで基礎体力を向上させたり、フォームを修正したり、数値的な目標を達成したりします。冬季練習は主に12月1月2月のことを指します。準備期とも呼んだりします。
ちなみに11月は移行期、3月は導入期といって、冬季練習を挟むようにして専門的なトレーニングを行います。
速く走るうえで必要な能力は、筋力や神経伝達、スプリントフォームなど様々ありますが、冬季練習ではこれらの能力を総合的に強化していきます。
また練習の量が大幅に増えるため、練習時間も伸びることが予想されます。つまり効率的に練習を行わないとダラダラしてしまうので、練習メニューは明確で明瞭にしておく必要があります。シンプルな練習メニューが良いですね。
主な練習メニューは走り込み系トレーニングやジャンプ系トレーニング、ウエイトトレーニング、サーキットトレーニングなどです。冬季練習は走るだけではなく、多角的に身体能力にアプローチしていきます。その結果、タイムの向上に繋がっていくのです。様々なアクションを身体に習得させて、総合的な運動能力の向上を意識します。
さて今回は冬季練習期間中の1週間のトレーニングスケジュールについて解説していきます。
冬季練習の目的とは
100m200m400mの選手にとって最も必要な能力は最大筋力値です。例えば50m走や立ち幅跳び、ボール投げなど全力で瞬発的に記録を狙う種目です。短距離走はおおよそ10月末でシーズンを終えます。そこから体を休めたりリフレッシュしたりする移行期(11月)を経過させます。
そして12月から翌年2月にかけてハードワークを繰り返します。基礎体力は勿論、心肺機能や柔軟性なども鍛え上げます。冬季練習は実際のスプリント能力向上に繋げる重要な期間といえるでしょう。
冬季練習で行う走り込みメニューについては200~300mの本数系、100m~200mのプラス走、200~300mのレペティション、200mのインターバル走、30~100mの坂ダッシュ、マーカー走、タイムトライアルなどが有効と考えられています。
ウエイトトレーニングはスクワット系やベンチプレス系、クリーン系がおすすめです。冬季練習期間はマックス値を挙上させるのではなく、60~70%の重量で10回を複数セット行うようにして、基礎体力の土台を作ってきます。
サーキットトレーニングは腹筋系やジャンプ系、プライオメトリック系の補強を10~15種目入れて、稼働時間を10~25秒でレスト間隔を5秒で回しましょう。基礎体力の向上に効果的なサーキットトレーニングは積極的に取り入れていですね。
陸上短距離走1週間の練習メニュー
1週間の練習メニューを考えるうえで重要なのは練習の強度とバランスです。強度が高すぎると怪我のリスクが増えます。また強度が低すぎると満足のいくトレーニングができません。
つまり適切な強度で、適度な休養を取りながらトレーニングを進めていく必要があります。冬季練習では多くの練習量と時間を費やします。
だからこそ週単位で体調の変化を考えながらメニューを構築したいですね。
この記事を参考にして、自分だけのオリジナル練習メニューを作ってくださいね!
この記事の目次
月曜日(プラス走でスピードレベルを上げる)
冬季練習では主に「スピード」と「持久力」を上げるトレーニングを行います。この2つにアプローチした練習方法がプラス走です。これは乳酸が発生している状況下でさらにスピードを維持したりピッチアップを狙ったりするトレーニング方法となります。
例えば200m+100mでは200mをマックスに近いレベルで走り、30~60秒レストを置いてから100mを走るという練習です。+100mではなるべくスピードを落とさないで走り切る能力を養います。冬季練習ではプラス走でセットを組み、走り込みます。
- プラス走250m+100m×4~6セット(R:60sec セット間:10min)
- プラス走200m+100m×4~6セット(R:60sec セット間:10min)
- プラス走150m+100m×4~6セット(R:60sec セット間:10min)
火曜日(200mのレペティションで限界値を上げる)
レペティションとはレストをしっかりとった上で、マックスで走り込むトレーニングです。多くの本数はこなせませんが、冬季練習期間中でもスピードレベルを維持したまま練習に取り組めます。
この練習をすることで、試合で予選→準決勝→決勝でタイムを伸ばしていける感覚を掴むことができます。
例えば200mの自己ベストが23.60としたら1本目を24.0で入ったとすれば2本目は23.8というようにスピードレベルが高い位置でレストをとりながら連続して走り込みます。徐々にタイムを上げていき、自分の限界値でタイムをキープします。ただレペティションはマックス走なので怪我には十分注意して行いましょう。
- レペティション200m×4本(R:12min)
- レペティション250m×4本(R:12min)
- レペティション300m×4本(R:15min)
水曜日(ウエイトトレーニングで筋力アップする)
ウエイトトレーニングは身体の筋力量を増やして、より瞬発的な動作を可能にします。中学生の短距離選手は30kg程度の重量で、フォーム意識で取り組むことをオススメします。
理由は、中学生は成長期といっても筋肉系の発達段階ではないからです。筋肉を十分発達させられるのは高校生からおおそよ35歳前後までといわれています。
これは100m200m400mの選手共通です。ウエイトトレーニングで走るうえでの適正体重まで増やして、走りに力強さを出していきましょう。
- ウエイトトレーニング(スクワット系+ベンチプレス系+クリーン系)60%×10回×7~10セット
- ウエイトトレーニング(スクワット系+ベンチプレス系+クリーン系)70%×7回×7~10セット
- ウエイトトレーニング(スクワット系+ベンチプレス系+クリーン系)80%×5回×7~10セット
木曜日(休息日を作ってモチベーションをキープする)
冬季練習は走り込みやウエイトトレーニングを中心とした反復練習を行ってきたので、疲労がピークに達していると考えられます。つまりアスリートは積極的な休養が求められます。そして筋肉は回復することで成長していきます。常にトレーニングしていても、筋繊維は細くなって痩せてしまいます。
だからトレーニングは筋肉を破壊する行為だと覚えておきましょう。トレーニングしてからしっかり体を回復させないと、練習の意味がありません。休むことは勇気が必要な行為ですが、練習のモチベーションを維持するためにもしっかり休んで、次の練習にフレッシュな状態で臨みましょう。
- 1000mジョグ&ストレッチ
- ハードルドリル&ストレッチ
- マッサージ&ストレッチ
金曜日(サーキットトレーニングと坂ダッシュで基礎能力をアップさせる)
サーキットトレーニングは短時間で高強度のトレーニングをすることができる優秀なワークアウトです。
主に行うメニューは腹筋背筋系や瞬発系、プライオメトリック系、ジャンプ系などの基本的な補強種目を10~15種目入れて、稼働時間を10~25秒でレスト間隔を5秒で回します。
筋力アップは勿論のこと、稼働し続けるので心肺機能の向上も狙えます。様々なメニューをこなすことで総合的に運動能力を鍛えることができます。
その後、坂ダッシュを入れます。サーキットトレーニングで身体を温めて、その流れでスプリント練習に繋げます。鍛えた筋力を走りに反映させていくイメージで坂ダッシュに取り組みましょう。
- サーキットトレーニング→坂ダッシュ30m×10本 60m×7本 80m×5本
- サーキットトレーニング→坂ダッシュ40m×10本 70m×7本 90m×5本
- サーキットトレーニング→坂ダッシュ100m×10本
土曜日(インターバル走で本数を走り込む)
土曜日は学生や社会人が練習しやすい日程なので、基本的には強度の高いトレーニングになる傾向にあります。インターバル走とは5~10本程度の本数を予め設定したレストで繋いで走り込むトレーニングです。
かなりきつい練習になるので覚悟が必要です。本数を重ねるごとに徐々に体力が削られていくので、後半はかなり心肺系と筋力系が削られる練習となります。
レスト中は基本的にウォークです。また設定タイムを作っておいて、練習の強度を調整しましょう。その中で、ポイントを意識して走り切るように心がけるのがインターバル走です。
- インターバル走150m×10本(R:6min)
- インターバル走200m×10本(R:7min)
- インターバル走250m×7本(R:8min)
日曜日(マーカー走で走り方・スプリントフォームを整える)
冬季練習ではハードな走り込みが中心となります。そのためフォームや走り方を気にしながら走ることが難しいです。だから走り方を修正する日を設けて、トレーニングする必要があります。
走り込み練習も正しいフォームで走ったほうが、効率的に成長していくことができます。間違ったフォームで走り込むと、その走り方が定着してしまうので注意しましょう。
マーカー走は等間隔のマーカーを中間疾走区間(スタートから40~70mあたり)に設置して、ピッチアップや足の軌道修正に効果的な練習方法です。100mを設定距離として行いましょう。
- マーカー走100m×5~7本(中学男子:1m75cm間隔)
- マーカー走100m×5~7本(中学女子:1m55cm間隔)
- マーカー走100m×5~7本(高校男子:1m95cm間隔)
- マーカー走100m×5~7本(高校女子:1m70cm間隔)
冬季練習の目的は『絶対的なスピードアップ』
冬季練習は量(走行距離)と質(スピードレベルの維持)を継続してトレーニングを重ねる期間です。目的はとしては冬季練習のメニューのポイントを押さえながら取り組むことです。
例えば、プラス走ではスピードレベルを維持したまま耐乳酸能力を意識しながら走り切ることや、インターバル走の中で腕振りや足の軌道を意識してみることも良いと思います。
レペティションでは、自分の限界値をキープしながら質の高い練習を積むことができます。これらのトレーニングの間に、身体能力の基礎的なパワーを向上させるサーキットトレーニングやピッチアップしたり足が後ろに流れないスプリントフォームを形成したりするマーカー走、脚力を鍛える坂ダッシュなどを行います。
走り込みだけでなく、総合的に身体を強化するスパンが冬季練習なのです。
まとめ
今回は陸上競技短距離走100m200m400mの中学生高校生選手向けに冬季練習においての1週間の練習メニューを紹介してきました。非常に練習量が多く、スピードレベルも高い練習メニューで、バリエーションも豊富です。
きつい練習ではありますが、強度の高いトレーニングを積み上げて春先のシーズンでしっかり結果が出せる体を作りましょう。
ぜひ参考にして、来シーズンに自己ベストを更新してください!!期待しています。