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『今だけでいいから駆け抜ける勇気をください』45.新しいマネージャー

2月に入って雪も降ったり、雨も降ったりした。

 

その度に走った。

 

コンディションに適応して室内で練習するのも一つの考え。

 

しかし、真波先生は悪天候で練習できることをチャンスだといっていた。

 

試合はどんな状況下でも行われる。

 

そのため、練習から希少なコンディションに慣れておくことが重要だといっていた。

 

そんな2月の上旬の練習は雪で真っ白になったグランドを踏み固めて、150m×4×3を必死に行った。

 

吐く息は白く、文字を入れたら吹き出しになりそうだ。

 

走って、インターバルをウォークで戻りながら、馬鹿な話しをすることが楽しかった。

 

不思議に思うだろうけど、しんどかったりつらかったりする練習は、何度も逃げたいと思ったけど、辞めてしまった方が後悔する。

 

このチームでトレーニングできるのは今年が最後かもしれないからね。

 

去年できた進学校の陸上部は、もしかしたら今年で最後かもしれない。

 

先のことなんて分からないけど、何となくそんなことを考えて、みんなとの練習を精一杯楽しんだ。

 

それ以外になかった。

 

練習の量も質も相対的に上がってきた。

今日は2月14日。世間ではバレンタインだ。

 

トオルは前日からチョコを貰っていた。

 

そんなことよりも陸上だと強がって学校に行く。

 

バレンタインデーなんてあるから、学校に行きにくくなっている。

 

駐輪場でレイジに会う。

 

「さー朝練するぞー!!」

 

レイジがぎこちない挨拶をしてきた。

 

「あれ?なんかソワソワしてない」

不審に思った俺はつい聞いてしまった。

 

「今日は高校に入って初めてのバレンタインだろ!!なんだかいけそうな気がするーーー」

 

余計なことを聞いてしまったな。

 

無駄に期待していると落胆してしまいそうだから、今日はいつも通りトレーニングに集中しよう。

 

何事もなく授業を終えて、クラスの中の下くらいの謎のキャピキャピ感はあるが、地味さがにじみ出ている女子から義理チョコを3つほど貰った。

 

ただただ貰ったことに感謝はするが、ブラックサンダー以下の価値しかないことは理解していた。

 

そんなことはどうでもいい。

 

無心に部室に向かう。

 

ポストを確認すると、メッセージ付きの箱が入っていた。

 

「うん?」

 

取り出してみてみると、【夏木トモヤくん】という文字があった。

 

慌ててカバンに入れる。

 

その日の練習は全く集中できなかったことを覚えている。

 

はやる気持ちを抑えながら、そそくさと家に帰った。

夕食を秒で済ませて自分の部屋で事実を確認したい。

 

上品な包装に可愛らしさが溢れ出しているではないか。

 

メッセージカードの裏には文章が書いてあった。

 

夏木トモヤくんへ

帰り道に河川敷のグランドで走っている姿をよく見ます。

応援してます!

あとマネージャーやってみたいと思うので、大丈夫だったらLINEください。

川草よもぎ

 

勝ち確だった。

 

箱の中身はこの際、あまり意味を持たないだろう。

 

「うーん、マネージャーが増えるのか。」

 

とりあえず、LINEすることにした。

 

初めまして!夏木トモヤです。

メッセージカードとチョコレートありがとう!

明日体験入部に来てみますか?

 

何度か躊躇したが送ってしまった。

 

するとすぐに既読が付き返信が返ってきた。

 

LINE送ってくれてありがとう!

同じ学年の川草よもぎです。

うん!トモヤくんのこと応援したい!

理科準備室のとこだよね?

 

恥ずかしながら、陸上部の部室は昔使われていた理科準備室ということで高い評価を受けている。

 

こういうときってすぐに返事をした方がいいか迷うけど、してしまう。

 

そうだよ(笑)

なら放課後に来てね!

あと応援してくれてありがとう!

 

素っ気ない返事になってしまったが、まだ相手のことを全然知らない。

うん!分かった!

それならまた明日ね!

 

これは返事をしなくても良いだろうと思い、既読スルー。

 

一体どんな子が来るんだろう?

 

そして、明日の朝練習でみんなにどうやって説明しよう?

 

実際ここが一番の問題かもしれない。

 

寝よ。

 

「あのーみんな今日体験入部に来る人がいます、マネージャーで」

 

気付いたら部室にて、俺はみんなの前で報告していた。

 

心配事ってのは最悪さえ引かなければ起こった内に入らない。

 

「!?!?!?聞いてねえぞ!トモヤどーゆーことだ??」

 

レイジはおちょくりながら聞いてきた。

 

このからみに対応できる人この世の中にいない説。

 

「昨日たまたま入りたいって子がいたからさ、、」

 

部室はただならない空気に包まれている。

 

これはどんな空気清浄機でも綺麗にできないレベルだ。

 

朝からなんでこんな目に遭わないといけないのだ。

 

「まさか彼女!?」

 

カイから追撃の一言。

 

彼女では決してない。

 

ただ全否定もできない。

 

俺はその場を濁して、授業に向かう。

 

その日の授業は少し長く感じた。

 

俺たちはただならぬ空気を纏いながら、みんなで部室に向かった。

ドアの向こうに誰かいる。人影がある。

 

ガラっ。

 

「ひゃ!あ、トモヤくん!川草よもぎです!今日からマネージャーとして入部しますっ!!」

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