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『今だけでいいから駆け抜ける勇気をください』21.新入部員とマネージャー!?!?

期末テストシーズンに舞い込んだ突然のニュース。

 

この名東高校陸上部にまさかのマネージャーが入ってくる。

 

否、4人目のリレーメンバーが入ってくるのだ。

 

7月も中旬になり、周りは夏休みへの期待と初めての期末テストへの緊張で躍起になっていた。

 

そして迎えた運命の月曜日、マネージャーが来る。そして、4人目のリレーメンバーも来る。

 

飛んで火にいる夏の虫状態だ。

 

誰なのかも全く分からない。前情報は全くないのだ。

 

昼休みは来週の期末テストに備えて、昼ご飯を食べた後はみんなで勉強するのが定石だが、その頃、小汚い理科準備室にある部室では会議が行われていた。

 

「どんな子が来るんだろうな?おとといの手紙、たぶん違うクラスの子だろうと思うけど分からねー、字は可愛かったけど」

 

そう、手紙を開封したのは2日前の土曜日で、週初めの今日月曜日の放課後にこの名東高校陸上部の部室に来るらしい。

 

レイジは能天気にブロッコリーを食べている。

 

そのブロッコリーはカットされておらず、スーパーに売っている等身大のブロッコリーだ。

 

アクアタイムズが好きらしい。俺もだけど。

 

ブロッコリーはたんぱく質の吸収を促進するパワーがあるから、レイジは積極的に食べている。

 

そんなことはどうでもいい。

 

「とりあえず、勉強のことは忘れて放課後に備えよう」

 

カイはなぜ名東高校に入れたか、疑問になるくらい学習意欲がない。

 

キャラクターとしては最高なのだが。

 

しかし、カイの言う通りだ。勉強どころではなかった。

 

レイジは角ばった木製の椅子を2つ並べて、肩甲骨を意識したワイドな腕立て伏せをしている。

 

なんて自由な部活だろうか。

 

っていうか深く考えているのは俺だけなのだろうか。

 

適当に弁当を食べて、今日の練習の打ち合わせを軽くする。

「新人戦まで後2か月。俺以外はみんな素人だから、招集も分からないだろうし、予選落ちするかもしれない。ただ出ることに意味があると思っている」

 

「出ることに意味なんてないだろ!俺だってトモヤと一緒に決勝に行くんだ!」

 

レイジはそう言った。

 

俺の認識の上をいっていた。純粋に嬉しかった。

 

「ありがとう、そうだよな!頼もしいよ!」

 

素晴らしい仲間を持ったと心から思えた。

 

同じ志の仲間がいるとはこんなにも心強いのか。

 

俺は新人戦までのザックリとした練習プランを説明した。

2人とも首を縦に振る。

 

昼休みが終わり、眠気を引きずりながら授業に入る。

 

抑揚のない型に囚われた授業はつまらない。

 

掃除の方が楽しいくらいだ。

 

と思っている間に放課後になっていた。

 

「マネージャー来ないね」

 

「4人目のリレーメンバーだろ」

 

リレメンよりマネージャーが気になって仕方ない男子の部室は悶々としていた。

 

もうすぐで練習があるので、練習着に着替える。

 

真波先生も河川敷のグランドで待っていることだろう。

フル〇ンでミズノのコンプレッションスパッツを着用する。

 

ガラガラガッツっ!!

 

「!?!?」

 

「、、、、、、、、、うす」

 

「きゃっあぁぁぁぁぁぁい!!!!!!!!!」

 

「えぁぁぁぁぇぇぇぇええええぇっぇぇぇぇーーーーー!!!!!!」

 

イメージとしては銭湯の男湯の更衣室に、女子高生が放り込まれた状況に近いだろう。

 

吹き出しのカッコは誰の言葉かもう分からない。

 

それくらい各々が感嘆を吐き出していた。

 

その瞬間は神業の如く素早く着替えた。

 

みんな揃って、

 

「ようこそ!名東高校陸上部へ!」

 

顔はすでに死んでいた。

 

「クラスは違うけど同級生の石橋(イシバシ)トオルって言います。今日からよろしく」

 

この状況を楽しんでいるのか、どこかほくそ笑んでいる。

 

「名東高校の陸上部って本当に健全な部活なの??マネージャー辞めようかな、、、、」

 

「いやいやいやいや、トレーニングウェアに着替えてただけじゃん!こんな時もあるって!ね!」

 

レイジは必死の弁解。

ただ着替えていただけで、活動停止になるなんてたまったもんじゃない。

 

「すみれ、陸上部ってこういうもんだから」

 

石橋くんがそういうと。

 

「ごめんなさい、突然。私ってマネージャーやっても大丈夫??」

 

「無論!もちろん!」

 

カイは楽しそうにそういうと、場の空気がようやく和やかになった。

 

一瞬、極度の緊張空間があったが、なんとか回避できた。

 

「秋の新人戦、リレー走ってくれるかな??」

 

俺は石橋くんに聞いた。

 

「いいよ」

 

「と言いたいところだけど、俺は遅い選手と走るのはゴメンだな。夏木くんが10秒台で走れることは知っているけど、そこの2人はどうなのかな?俺に勝つか、堂々の実力があるなら走るよ」

 

小汚い理科準備室にピンと張りつめた戦慄が走った。

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